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「指導医養成講習会」
9月7、8日、第9回北海道プライマリ・ケアネットワーク 臨床研修指導医養成
講習会を企画し、チーフタスクフォースとして参加した。当日、ガトーキングダムサッポロ会場で7:00から打ち合わせ。受講者は20名。
まず山本和利の挨拶、タスクフォース紹介後、山本和利のリードで「アイスブレイ
キング」。偏愛マップを使って、雰囲気を和らげた。
続いて勤医協札幌病院の尾形和康氏の主導で「カリキュラム・プランニング」を120分。従来型カリキュラムのミニレクチャー。学習プロセスの解説。教育目標の分類(知識、態度、技能)とそのレベルの説明(知識:想起→解釈→問題解決、態度:受け入れ→反応→内面化、技能:模倣→コントロール→自動化)。一般目標(GIO)と個別目標(SBOs)の関係を説明。SBOsをすべて達成すればGIOを達成することができる。CVカテーテルの挿入」等の課題を各グループで演習。教育目標はただ作ればよいわけではない(RUMBA:real, understandable, measurable, behavioral, achievable)。教育目標はスマートに(SMART:specific, measurable, achievable, relevant, time-bound)。学習方略の解説。学習成果は、人に教えると90%、講義を受けると5%が身につく。学習方略を選択するときの選択の仕方。順序、方法、組み合わせ、場所、道具、時間、経費等を考慮する。評価の解説
。「学習者は自分がどのように評価されるかによって学習態度を変える」すなわち、評価は人をつくる。研修分野別マトリックス表を使ってグループ作業。普段指導している科に研修医が回ってきたという設定で、指導医、研修医役に分かれて、ロールプレイ。指導医が背景、研修できる内容を説明する。その後、研修医は過剰な希望を述べる。指導医はRUMBA,SMARTを意識して、研修医の希望をお互いが納得できる最終的な研修目標に修正する。
江別市立病院の日下勝博氏の主導で「上手なフィードバックをしよう」のセッション。指導医としてフィードバックにおいて悩ましいと感じかことをグループ討議。自己分析能力の高い研修医、生真面目だが気づきの少ない研修医、能力以上に自己評価が高い研修医という3シ
ナリオを用いたロールプレイを行った。3人一組でのロールプレイは研修医役、指導医役、評価者役をそれぞれ1回ずつ(緊張しやすく技術が未熟な研修医、当直明けで眠気を堪えて外
来研修を受ける研修医、問題をあちこちで起こすのに自信満々の研修医の3シナリオ)。ここでは指導医としての質を上げることが目的なので、指導医役には、シナリオに沿った役つくりよりも、研修医への最良のフィードバックを実践するという前提で指導を行った。
第一日の午前の日程を終了したところで、写真撮影となった。筑波大学から依頼された(指導医のストレスについて)アンケートに応えてもらった。
昼食後、札幌医大松浦武志氏の主導で「SEAの手法を活かした教育カンファランス」セッションを行った。はじめに成人教育理論についてのミニ講義。人は何から学ぶか?先輩の背中、プロジェクトに参加して、挫折から、という意見がある。その後、「嘔吐、発熱で救急受診した60代男性」についてヒアリハット・カンファランスを研修医に実演してもらった
。急性胃炎として対処したが、最終的に脳出血であった。75枚のスライドを使って精力的に発表された。「意識障害をなめるな」「嘔吐は消化器疾患だけではない」「忙しいときこそ一歩引
いて自分を客観視する」という学びを得た。最終的な総括として、「診断エラーを防ぐためにシステマティックなアプローチを意識する」最後に自分の施設で振り返りセッションを行うにはどうしたらよいかをグループで話し合ってもらった。
続けてむかわ町穂別診療所の夏目俊彦氏の主導で「5マイクロスキルの実践」セッション。一番の問題は、研修医が考えて答える前に、指導医が答えを言ってしまうことである。今回お勧めのマイクロスキルは5段階を踏む(考えを述べさせる、根拠を述べさせる、
一般論のミニ講義、できたことを褒める、間違えを正す)。外来患者シナリオ3つを用いて3人一組になってロールプレイ(シナリオの読み上げ)を行った。最後は、自分たちでシナリオを作成してもらい、いくつか自信作を発表してもらった。
続いて月寒クリニックの寺田豊氏に主導で「community-oriented Primary Care(COPC)を用いた地域医療の教え方(community-based medical education)」セッション。
CBMEの3つの目標
1. 総合診療・家庭医療について学ぶ
2. 総合診療以外の分野を学ぶ
3. 多数の分野を並行して学ぶ
12の秘訣
1. 全人的・包括的・継続的な医療を教える
2. 地域の医療スタッフがロールモデル
3. カルチャーショックを振り返りにつなげる。
4. カリキュラムを与える。
5. 学ぶ時間を確保する。
6. サポート・ガイダンス、カウンセリングをしっかり行う。
7. ポートフォリオを利用した評価を行う。
8. 実習教材の工夫をする。
9. 体験から学ぶ。
10. 地域医療スタッフから生部。
11. 社会的な役割を学ぶ
12. 地域との関わり合いを強化する。
これらについて具体的な事例をあげながら進められた。
次にロンドン大学モデル(高次医療機関と家庭医診療所のセット)とケンブリッジモデル(都会から離れた診診療所で研修)を紹介。Asset-based community development(ABCD)を紹介。5つのassets。①個人のスキル、②ボランティア組織、③機関、④経済的洗剤能力、⑤土地・物理的長所。
新しい用語が一杯で参加者はついていけただろうか。
「北海道における地域医療の現状と道の取り組みについて」と題したセッションで北海道保健福祉部の石井安彦参事が講演された。今回は、北海道の医師不足を強調された。指導医の役割も強調。高齢医師が増えているが、若い医師は減少している。地域偏在の話。札幌圏内に集中。北海道の取り組みを紹介。「地域医療再生計画」を紹介。道内の研修医の実態に加えて、専門医制度についての最近の動向が示された。都市部の定員は減らしている。北海道は空定員が多い。3年間の研修医は56.3%北海道に残っている。研修後、小児科、産婦人科は志望者が研修後低下している。研修医は指導体制を重視して選択している。
そのまま夕食を摂り、懇親会に移行。
二日目、山本和利が「臨床研修制度と専門医制度」についてのミニ講義を行った。臨床研修制度についての問題点をグループ討議してもらった。参加者の大部分が問題があることは認識した上で、現制度を是認していた。専門医や専門医制度の在り方についても討議してもらった。新たな専門医認定機構が設置されるが、国が関わっていない等、注意深く見守っていく必要があろう。
江別市立病院の阿部昌彦氏主導での「教育の評価」は、3シナリオを準備していずれか1つのシナリオに沿ってロールプレイを行った。最初に初期研修医評価のための指導医会議(指導医、シニア研修医、看護師長、看護主任、ソーシャルワーカー役)を模擬体験した。最後に、自施設で行っている360度評価を紹介された。自己省察の大切さを強調された。
最後はクリニックあずまの大門伸吾氏の主導で「ティーチング・パールを共有しよ
う」のWS。参加者各自が得意ネタで10分間講義を白板で行い、そのやり方へのフィードバックをしてもらった。テーマは、高齢者の発熱(4CD VP3)、大腿骨近位部骨折、漢方は体にやさしいか、リウマチ、外科的気道確保、ヘリコバクター・ピロリ菌、意識障害,慢性下痢、肺がんが疑われた場合の外来診療の流れ、US health care system primary care とmidplevel providor(ナース)、切断肢、気分障害、いつリウマチを疑うか、ERで急性冠症候群を見逃さない、心不全、アルコール依存症、睡眠障害、慢性疾患の外来診療のコツ、エコー下CVカテーテル挿入のコツ、外科研修(手術)、等であった。和気藹々とした雰囲気で講義は進んだ。
総括として、参加者の感想をもらい、受講者代表に終了証を手渡して解散となった。来年度、ブラッシュアップで企画を試みたい。(山本和利)
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プロフィール
北海道の地域医療を支える総合診療医の養成を目指す後期研修プログラム「ニポポ」を支える北海道プライマリ・ケアネットワーク代表理事のブログです。
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