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ニポポ代表理事ブログ---- 総合診療医を目指す皆さん、北海道の自然を満喫しながら研修をしてみませんか。
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7月18日、札幌医大で、ニポポ研修医の振り返りの会が行われた。大門伸吾医師が司会進行。後期研修医:2名。 初期研修4名。他:7名。
研修医から振り返り5題。
ある初期研修医。地域医療研修の報告。「地域で最期まで生きされるよう」がモットーの道東の医療施設で外来研修、老健施設研修、訪問診察、検診・予防接種等を実施。
ここでは意見交換の場が多い、様々な職種とのカンファが多い、地域からの信頼が大きい、患者さんが生き生きしている、院長がパワフルである等の感想を述べた。
89歳男性。気性があらく、認知症がある。誤嚥性肺炎を繰り返している。息子・娘は無関心で嫁が介護している。食べたいものを食べさせたいが、肉親からの批難が心配であった。医療従事者と相談の結果、思い切って食べさせたら、とても上機嫌になった。「人には食べることが大切である」
96歳男性。ADLは大丈夫。老人施設から自宅へ帰ることを希望。在宅サービスの使用で家に帰したい。娘の不安が強く、火の不始末を心配している事例。考えはそれぞれ。考えをすりあわせ、みんなの意見を調節してゆく。研修を通じて、患者の背景が見えるようになった。また様々な意見をきくことができるようになった。
ある研修医。泌尿器で研修。透析を毎日見ている。透析患者で、肺水腫で亡くなった患者さんを経験。
基礎疾患のない33歳男性。3時間の運動後全身倦怠感。その後外来で「横紋筋融解による急性腎不全」と診断され、入院。BUN:70, Cr:7.48,CRP:1.28ここで腎不全の鑑別。CTで尿路系に閉塞なし。腎生検実施。腎性低尿酸血症が疑われた。急性腎不全では、尿酸値にも注目する必要がある。コメント:運動誘発性腎不全に腎性低尿酸血症が多い。家族歴がある。無酸素運動(トラック競技、サッカー等)が原因。腰背部痛がある。男性に多い[93%]。
 
ある初期研修医。外来症例。泣きやまない3カ月女児。入浴後に発熱した65歳男性。ストマ周囲からの出血。ルアーが上腕に刺さって抜けない(異物を残さなければ抗菌薬は不要)。炎天下で仕事をしていて筋肉の痙攣が起こった38歳男性。食事中に誤嚥した89歳男性。角膜外傷(小児には眼帯をしないこと)。
13歳女性。悪心、右下腹部痛。水様下痢。38度。WBC;10400,CRP:4.1,入院せず、その後悪化。虫垂炎に特徴的な腹部所見あり。妊娠していないことを確認し、外科医をコール。診察後、腹膜炎には至っていないと判断された。造影CTで細菌性腸炎と診断し入院加療になった。ここで虫垂炎のレビュー。発熱や嘔吐が疼痛の発生に先行する場合は、通常は虫垂炎ではない。
 
ある研修医。外来症例。急性中耳炎。人工股関節脱臼。過換気症候群。下腿切創(感染の起炎菌は黄色ブドウ球菌が連鎖球菌である)。
80歳代男性。買い物中に痛みが出現。呼吸困難も出現。前立腺がんの既往。S状結腸がんの既往。Sa2;92%。両下肢リンパ浮腫。乾癬。両下肢の浮腫、発赤著明。CTでCOPDあり、大動脈解離はなかった。Dダイマーが高値。造影CTで肺塞栓症の所見なし。
その後、胸椎多発転移が判明。腎機能が低下し、透析導入となった。造影剤を使わずに大動脈解離や肺塞栓症を除外できないか?造影剤使用に関する危険因子;eGRR<60ml/m、糖尿病、脱水、腎毒性薬剤、等が挙げられる。予防は生食で補液。NSAIDや利尿剤を中止する。予防的透析は意味がない。
 
ある初期研修医。失神で救急搬送されてきた70歳女性。法事中に発汗、動悸。目の前が真っ暗になった。2-3分意識なし。血液検査、心電図は異常なし。以前にも玉ねぎの仕分中失神している。降圧剤が変更になってから(ARB+利尿剤)失神になったと本人は思っている。起立時血圧が20mmHg低下するが、失神は起こっていない。
今後、どうすべきか? 起立性低血圧でよいのか?褐色細胞腫等を考慮すべきか?
 
病棟中心とした研修から、外来や老健施設を中心とした地域医療研修をすることで、患者背景や患者の思いを考察することになるということがわかった。研修する場(もちろん指導医も)の重要性を再認識させられる発表会であった。(山本和利)

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「PMRの診断と治療」
 
頚椎症の手術目的で入院した患者さんが、発熱と炎症反応があるため、手術が延期となった。病歴や身体所見からpolymyalgia rheumatica(PMR)を疑った。
 
たまたま目にした
・Helliwell T. et al. Diagnosis and management of polymyalgia rheumatic. British Journal of General Practice 2012;62:275-6.
を読んでみた。
–      PMRは高齢者によく起こる炎症性リウマチ疾患である。
–      両肩の痛み、朝のこわばり、炎症反応陽性、ステロイド低用量で著効
英国人の生涯罹患率、女性:2.4%、男性:1.7%           
 
診断
50歳以上の患者で、両側の肩や下肢の痛み、朝のこわばり、炎症反応陽性、が揃うと強く疑う。ただし、似たような症状を起こす疾患は少なくない。
・リウマチをはじめとする膠原病
・結核、細菌性心内膜炎などの感染症
・リンパ腫、多発性骨髄腫などの悪性疾患
・その他:内分泌疾患、薬剤性、パーキンソン病
治療
・プレドニン15mgで3週間、その後、12.5mgを3週間、10mgで4-6週間、その後、4-8週間ごとに1mg減量してゆく。
経過中は症状と赤沈、CRPでモニターしてゆく。
 
専門医に紹介した方がよい患者
非典型的様相
・60歳以下
・慢性の経過
・肩の症状がない
・炎症性のこわばりがない
・レッドフラッグ徴候(全身症状、体重減少、夜間痛、神経所見)
・末梢性関節炎、筋疾患、自己免疫反応
・著しい炎症反応
治療への反応
・著効しない
・プレドニンを減量できない
・再発する
・プレドニンが禁忌で使えない
・2年以上治療している
 
最近では赤沈を依頼する医師が少なくなったが、総合診療科では初診時に欠かせない検査である。

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「日本PC連合学会理事長の記念講演」
 
6月23日、札幌で開催された2012年度北海道プライマリ・ケア連合学会北海道ブロック支部定時総会に参加した。そこで日本プライマリ・ケア連合学会理事長の記念講演を拝聴した。演題は「日本プライマリ・ケア連合学会を取り巻く現実とこれからの方向性」である。参加者は約40名。
 
講演要旨
プライマリ・ケア連合学会の目標を紹介。「人々が健康な生活を営むことができるように地域住民とのつながりを大切にした、継続的で包括的な、保健・医療・福祉、および学術活動を行う。」
 
日本は今大きな医療問題を抱えている。開業医はまじめな集団である。この学会員もまじめである。しなしながら、正義や善意だけでは何も始まらなかった。日本の医療状況はどんどん悪化している。これから本学会は戦略的やってゆく必要がある。
 
ここで家庭医療の定義を紹介。間口を広げて、より質を厚くするよう目指す。誕生から死までの個人・家族を継続的診てゆく医療である。
 
今ジェネラリストに対する言葉が混乱している。その混乱を収拾するために制度的な担保を必要としている。
 
医師会はどこまで地域医療に手を差し伸べて来たのか。この学会が主幹になり得ないのはなぜか。戦略を考えてゆきたい。
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「プライマリ・ケア・スタイル」というものがある。この学会員はリックサックを背負って、服装に拘らない。お金を持たない。よく勉強する。インターネットに強い。ネットワーク作りがうまい。他の学会にはない雰囲気がある。他者をリスペクトする。この流れを尊重してゆきたい。
 
今回はアライアンス委員会について説明したい。日本医師会会員は16万人。開業医と勤務医が半々となっている。専門医としては外科が最大で2万人いる。総合内科専門医が1万4千人。家庭医専門医は圧倒的に少ない。本学会の会員数は5788名。研修プログラム数は増えたが、参加研修医の数は増えていない。サブスペシャリティに総合医がない。
 
在宅医療・介護が今後大きな問題となる。死亡者数が今後40万人増えると予想されている。専門医から開業医に移るとき、自分の得意分野の受診患者は少ない。それに対応できる施設は増えない。そんなマンパワーでこの状況を乗り切れるのか?
 
この学会が主幹になるためには、現実を突き破る必要がある。次の2つを進めたい。
・プライマリ・ケア・スタイルの拡大
・高い専門性の維持
 
現実を見ながら、ちょっとでも良い方向に進んでゆこう。他学会の方々と手を携えてゆく。
 
日本の閉塞した医療状況を改革してゆこうという意欲の伝わる講演であった。

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「入院患者の血糖値はどの程度が適当か」
 
「入院患者の血糖値はどの程度が適当か」について勉強してみた。
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最近の研究では、入院患者の38%に高血糖が起こる。ランダム化臨床試験で、強化インスリン療法をしても死亡率は減らさない。逆に重篤な低血糖が増加する、と言われている。
 
•       Kansagara D, et al. intensive insulin therapy in hospitalized patients: a systematic review. Ann Intern Med;2011154:268-82
では、31のランダム化臨床試験を分析している。
–      ICUで強化インスリン療法をして患者の利益があるか?
–      不利益があるとしたらどういうものか?          
 
プライリマリ・アウトカムとして1ヶ月以内の死亡率と入院率を検討している。
セコンダリー・アウトカムとして3ヶ月以内の死亡率、感染率、入院日数、低血糖をみている。

•       結果
–      有意差はなかった。RR:1.0(95%CI:0.94-1.07)
–      21%で敗血症が減った。RR:0.79(95%CI:0.62-1.00)
(研究により差がある)
–      重篤な低血糖が6倍増えた、
 

この研究から得られることとして、雑誌EBMのEbenezer Nyenweは次のようにコメントしている。
•       入院患者の目標血糖値を80-110mg/dlに設定するのは低すぎる。
•       目標値は140-180mg/dlがよい。
•       (入院患者ではMetforminの安易な使用も慎むよう警告している)
 

入院患者に関しては、血糖値を低くし過ぎないことが最近の動向のようだ。
 

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「心房細動をめぐる最近の話題」
 
第263回日本内科学会北海道地方会で専門医部会教育セミナー「心房細動をめぐる最近の話題」を拝聴した。講師は市立札幌病院の甲谷哲郎氏である。
 
心房細動の治療の仕方が変わりつつあるという。ミニレクチャー後、症例を介して講義が行われた。5621e1bc.jpg

■心房細動について
病態は異常自動能亢進であり、肺静脈付近に原因があると言われている(肺静脈と心房の付近をアブレーションする治療法がある)。ポンプ機能の低下が起こる。血栓形成による脳塞栓症(大きな梗塞巣)を予防する。最近では高血圧、冠動脈疾患、心筋症に伴うAfが急増している。

・治療の歴史をみてみると、除細動をすると長年されてきた。米国の研究で、リズム治療した群とレート治療群(正常化した者のワーファリンは中止となっていた)とで脳卒中発症を比較したがアウトカムに差はなかった。ワーファリンは継続することが重要である。

・日本でJ-RHYTHMという研究が行われた。発作性Afではリズム治療(サンリズム、タンボコール)。持続型はレート治療(ワソラン、ジギタリス)が有効ということになった。
もちろん、基礎疾患がある場合には、基礎疾患をまず治療する。

・日本で行われたJAST研究によると、軽症者へのアスピリンの脳梗塞予防効果はなかった。

・CHADS2スコアが3点以上はワーファリンを使用する。INR;75歳以下では2.0-3.0, 75歳以上は1.6-2.6を目標とする。{CHADS2:CHF(心不全)、HT(高血圧)、Age>75(高齢)、DM(糖尿病)は、それぞれ1点、Stroke/TIA(脳卒中/一過性脳虚血発作)は2点に計算される。合計点をCHADS2スコアという。}
 
・ワーファリンは2mg/ 日から開始する。この治療はモニタリングが大変。抜歯のときは継続でよい。内視鏡検査でも服薬は継続でよい。

・ダビガトランは出血が少なく、ワーファリンと効果に差がない。CHADS2スコア1点にも推奨となった。腎機能低下者には要注意。副作用として消化器症状がある。手術時には24時間前に中止すればよい。ワーファリンからダビガトランに切り替わる事例が増えるだろう。

■症例
・54歳男性、心房細動がアルコール飲酒後の翌日に起こる。受診時の心電図は正常。
診断;発作性心房細動。甲状腺をチェックする。治療は禁酒。CHADS2は0点なので抗凝固療法はしない。サンリズムまたはタンボコールを使用。安定したところで薬剤を中止。
 
・75歳女性。高血圧治療中。心房細動120/分が2日間以上続いている。糖尿病はない。左房径はやや大きい。
診断;持続性心房細動。甲状腺をチェックする。治療:まず、血圧のコントロール。CHADS2が2点なので抗凝固療法の適応。レートコントロール目的でβ遮断薬またはワソランを使用する。
 
・43歳男性。検診で異常なし。海外出張後、動悸を主訴に救急車で受診。120/分。
診断;心房細動。治療:若い人では翌日、正常になっていることが多い。ワソラン静注。ワソラン3T+サンリズム3Tの処方をする。改善なければ、翌日、朝食を抜いて受診してもらう。ヘパリンを使用してDCをかけた(血栓形成がされる48時間以内にかけなければならない)。心電図は正常化し、その後、再発なし。
 
・44歳男性。検診で心房細動を指摘されている。無症状。72/分。左房径が大きい。甲状腺機能は正常。
治療:CHADS2は0点なので抗凝固療法はしないのがエビデンス。ただ患者から希望があったため、ワーファリンで抗凝固療法を3週間おこなってから、入院してもらいヘパリン静注後、DCを行った。洞調律になったが2ヶ月後にAfに戻ってしまった。ワーファリンを継続している(4週間以上継続する必要がある)。
 
・65歳男性。検診で心房細動を指摘された。自覚症状なし。心電図;心房細動で90/分。
治療:CHADS2は0点だが、65歳以上は治療選択に関して議論がある。この事例ではレート治療のみで経過をみて、いずれ抗凝固療法を開始する。(最近のエビデンスではレート治療をしても差がないとなっている)。
 
・70歳男性。動悸。心電図;心房細動で120/分。
治療:CHADS2は1点。β遮断剤とダビガトラン(プラザザキサ)を処方。(III群のヘプリコールは専門医が用いる薬剤である。なぜなら心機能が落ちるし、致死性不整脈を誘発するから)。
 
聴衆者から、個々の症例について対応方針を聞きながら講演を進められた。久しぶりに盛り上がった講演会であった。(山本和利)
 

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プロフィール
北海道の地域医療を支える総合診療医の養成を目指す後期研修プログラム「ニポポ」を支える北海道プライマリ・ケアネットワーク代表理事のブログです。
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