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ニポポ代表理事ブログ---- 総合診療医を目指す皆さん、北海道の自然を満喫しながら研修をしてみませんか。
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「サイト・ウォッチ」

8月29日、勤医協のぽぷらクリニックで、ニポポ研修医の振り返りの会が行われた。寺田豊医師が司会進行。後期研修医:1名。他(技師、放射線技師、看護婦、事務員):17名。
 
はじめに参加者の自己紹介。家庭医療への熱い思いをそれぞれが語ってくれた。
 
ある研修医の経験症例。ある1型糖尿病患者の事例。80歳代の女性。1型糖尿病。多発性脳梗塞と認知症(長谷川式11点)。高血圧、気管支ぜんそく、発作性心房細動、膝OA(人工関節置換術後)、大腿骨頭頸部骨折.
 
樺太生まれ。飲食店経営。夫は胃がんで他界。その後、厨房で仕事。生活保護受給。長女と二人暮らし。子ども4名は札幌市内に居住。
 
イレウスで入院時、HbA1c;11.3%.急性膵炎、1型糖尿病と診断された。
「入院したくない」「血糖値が高めの方が体調がよい」という思いがある。糖尿病ケトアシドーシスや低血糖で数回入院している。通院が困難となり、往診導入となった。
 
問題点
#高齢認知症
#インスリン管理が必要。
#食事管理
#同居者が病気で、患者の面倒が看られない。他の子供の理解もない。
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往診前の訪問(長女の思い)
・入院させたくない。
・血糖値の異常は仕方がない。
・このまま亡くなったほうが本人は楽ではないか。(介護放棄?を感じた)
 
経過
インスリン1回注射。低血糖がしばしば起こる。400mg/dl以上もしばしば。慢性の臍周囲の持続痛を訴える。
 
入院を提案したが、拒否。インスリン2回うちも拒否。自己血糖測定も拒否。
 
BPSモデル、INTERMED(病歴、現状、見通しについて、BPS+医療との関わりが加わる)で分析。
 
同居者を交えた多職種在宅合同カンファランスを行った。同居者の誤解が減り、医療者と理解が深まった。インスリン量を減らし、低血糖を減らすことにした。
 
Patient-Centered Care(認知症ケアby トム・キットウッド、1990年)
認知症の人の視点で世界を見るようにする。相互に支えあう。倫理と社会心理学を重んじる。
 低血糖発作の頻度が減り、同居者との人間関係が改善し、同居者の喫煙本数も減少した。また慢性腹痛の評価をすることになった。大動脈解離が疑われたが、造影CTは回避した。
 
このような複雑な事例では、①問題点の抽出、分析、②患者・家族とのコミュニケーション、③多職種連携が重要であることがわかった。
 
90分にわたるプレゼンテーションであった。家庭医療の手法を獲得しながら、内科的な診断・治療技法についても同時に向上させることを新たな目標に掲げ会は終了となった。(山本和利)

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6月19日、札幌医大で、ニポポ研修医の振り返りの会が行われた。松浦武志助教が司会進行。後期研修医:1名。初期研修1名、他:6名。
 

ある研修医の経験症例往診と外来の研修が主体である。認知症で診察拒否をする80歳女性。るい痩で入れ歯が合わない。80歳代の慢性の頭痛。精神科から大量の薬剤が処方されている。心不全でペースメーカー在の90歳代女性。おりものがあり婦人科へ。寝たきりの80歳代女性。食が細い。喀痰が多く、微熱があり、入院となった。80歳代女性。徐脈である、心不全、貧血。薬剤性を疑う。多剤内服中の70歳代女性。起立時のふらつき。薬剤の減量を指示。
 
研修医から振り返り1題
33歳男性。2型糖尿病、知的障害、脂肪肝がある。グループホームでひとり暮らし。169cm,102013-06-19Web.jpg
0kg, 両親も知的障害。菓子メーカーに勤務。BP;135/89mmHg,HbA1C:11%。
スナック菓子を食べる。ラーメンのドカ食い。入院することで体重は減少する。退院後、散歩を中止。体重の増加。
外来初回:食事内容を改め、減量の必要性を説明した。(これまでのやり方を踏襲)
 
家庭医の診療の特徴を出そうと考え、新たなアプローチに取り組んだ。
1)ナラティブ・アプローチを用いて糖尿病に対する思いを探ってみた(ナラティブ・アプローチとは、患者や相談者を理解する際に、彼らの主観を含めた全体性を重視するアプローチ。ナラティブとはストーリーや物語という意味)。
食べ過ぎによる肥満が原因と思っている。糖尿病は悪いもので、失明、足が腐る病気である。合併症を防ぐには、減量でるということがわかった。
生物心理社会モデルで、それぞれの領域で整理してみた。
病気以外の点で、間食がやめられない心理と自由に食べられる環境が判明した(お金に不自由しておらす、食事量を制限する人がいない)。
重要度・自信度モデルでも検討した。運動、食事が重要と認識しているが、自信がないようだ。短期目標として、週1回行っているバドミントンの回数を増やした。食事のカロリーを減らしてもらった。行動変容の関心期と考えた。
LEARNのアプローチも用いた。
L 共感をもって患者の問題に対する認識識を聴く
E 医師の認識識を説明する
A 共通点と相違点を認識識し、相談する
R 相談した結果できた⽅方針を勧める
N 実施できるように患者と交渉する
これらのアプローチを用いて、行動変容をもたらすことができた。
クリニカル・パール:難治性の糖尿病患者に対して、さまざまなアプローチを用いて行動変容を起こさせることが重要である。改善できる行動を患者自身に述べさせる。
 
研修終了生からの報告。
80歳代女性。後頭部痛。言葉が出ない。血圧が高い。BP;160/90mmHg。はっきりした神経学的所見なし。TIAを疑い、専門医を紹介した。後で脳出血であるとわかった。出血性梗塞の可能性は?
 
研修医は着実に家庭医に必要な知識と技法を身につけている。このペースで頑張ろう!
        
 

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「5月の三水会」
5月15日、札幌医大で、ニポポ研修医の振り返りの会が行われた。若林嵩雄助教が司会進行。後期研修医:1名。初期研修3名、学生2名、他:6名。
 

ある研修医の経験症例。
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往診と外来の研修が主体である。往診患者は50名。単純CTも撮れる。血液、尿、単純XPはできる。いくつかの症例の紹介。家族関係、心理的問題などに注目して話が進んだ。この地域は高齢化率が高い。町の中の写真を撮ってそれに名前を付ける実習を行った(photovoice)。独居者も多い。

 
研修医から振り返り1題。
81歳男性。左肺上葉腺癌。COPD、脳梗塞後遺症、認知症、脂質代謝異常。高尿酸血症。
服飾関係の仕事。脳梗塞後、家族と絶縁状態である。高齢者住宅に居住している。ノロウイルス、インフルエンザに罹患。頻回に受診する。訪問時、息苦しさを訴えることに対して、生物心理社会モデルで説明を考えた。
不安が強かったが、抗不安薬を処方する前に、臨床倫理4分割を用いてスタッフで討論を行った。
1.医学的適応、2患者の意向、3QOL,4周囲の状況に分けて問題点を取り上げ、解決の仕方を話し合った。このような拡大コンセサス・ベースト・アプローチが終末期のあり方を決定することが重要であると考えられた。
 
クリニカル・パール:終末期のあり方が明確になっていない症例では、施設等を含めた幅広い職種の担当者が集積する在宅合同カンファランスを行い、コンセンサスを形成するすることが重要である。
 
研修終了生からの報告。
さまざまな病院改革を進めている。仕事を増えている。
 
20歳台女性。前日から発熱でふらふらして動けない。軽度咽頭痛あり、インフルエンザ陰性。WBC:43100, Hb 5.1g/dlで救急担当医からコンサルトを受けた。CRP;27.血液内科に一声かける。問診、身体診察、妊娠反応をチェックした。顔面蒼白。BP:90/50mmHg, HR:110/m、SpO2:98%, 38.7度。数年前に出産歴あり、その後死亡。本人は「今、妊娠の可能性はない」はないと断定している。下血、黒色便はなし。診察で下腹部に硬い腫瘤あり。エコーで子宮と思われるところに、モヤモヤした所見あり。妊娠反応は陽性であった。婦人科医を呼んで診察してもらったところ、子宮の中で胎盤が腐っている(そっと自宅分娩していた)。「子宮内胎盤遺残による敗血症」と診断。衝撃的な症例であった。
 
クリニカル・パール:女性を見たら妊娠と思え。女性は呼吸するように嘘をつく。
 


ミニ・レクチャー
 81歳女性。左足だけがガクガクとして立てなくなった。救急搬送された。会話はできる。バイタル問題なし。既往:高血圧、弁膜症、脊椎ヘルニア。外傷歴なし。
「何を考え、どんな所見をとるか。」
不整脈なし。脳神経:異常なし、腱反射:異常なし。神経所見異常なし。
「脳梗塞、心原性失神を考えたい。」
CTR:64%(臥位),ECG;AMI所見なし。血液AMI所見なし、低血糖なし。1時間後のECG:著変なし。「TIAの疑い」として、本人の希望により帰宅とした。後日、脳外科へ行くように紹介状を書いた。
6日後、脳梗塞であることが判明した。
 
TIAに時間の区切りはなくなった。30分以内に50%で症状が消える。
24時間以内に症状が消えたうち、33%が脳梗塞を起こしていた。
24時間以内にMRIを撮る必要がある。
TIA発症後90日以内に15%が脳梗塞を起こす。
ABCD2スコアという予後予測因子がある。
90日以内の治療効果:NNT:21
UpToDateはアスピリン+ジピリダモール、またはクロピオグリルを推奨している。
 
学生、初期研修医にとっても身のあるカンファランスにしてゆきたい。(山本和利)
 

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4月27日 北海道プライマリケアネットワーク 後期研修医 研修発表会
 
本日はNPO法人北海道プライマリケアネットワークの通常総会が「かでる2・7」の会議室で開かれた。その中で、現在当法人の後期研修医の昨年度1年間の研修発表会が開かれた。
 
これまでの1年間で経験した症例の概略の発表では、几帳面に症例数を記録しているさまが見て取れた。後期研修ともなると、大方の研修医は日常診療が「研修」というより「業務」となり、右から左へと「流れ」て行きがちとなる。そんな中でも「経験症例」として、記録を残しているさまは丁寧に研修を行っているあかしと言えるだろう。
市内でも有数の救急病院で研修しただけあり、その経験症例数はかなりの数になる。それも、内科ではなく、他科での研修ということで、分野も多岐にわたり、まさに「ほとんどの病気を経験している」感じである。こうした研修ができるのも当法人の特徴といえるだろう。
続いて、最も印象に残った症例の振り返りの発表である。
症例は小児の自殺未遂である。
この症例は研修医にとっては相当印象に残った症例のようで、昨年度の研修中も何度か相談を受けた症例であった。
救急病院では自殺企図の患者さんは「救命」のみ行って、その後の診療は精神科でお任せするという流れ作業のようになることが多い。実際、研修医本人もいままではそのように思っていたようであるが、この症例をきっかけに、患者の心理的な背景や家族構成・学校などの社会的な背景にも思いをはせることができたようである。また、この症例のように、「自殺未遂」という形で何らかの表舞台に出たものはほんの「氷山の一角」であり、その海面下には、いつ表舞台に出てもおかしくない状態の「前患者」が多数いるのではないか?という気付きが生まれたようだ。b9f91e2a.jpeg
一つの症例から、時間をかけて、多方面にわたる振り返りを行えるのも当法人の教育の特徴である。会場からは経験豊富な小児科医や、地域医療の最前線の現場の学校医からの適切なフィードバックもあり、学び深い研修発表会となった。
現在、当法人の後記研修医は1名しか在籍していないが、今後、われわれと志を同じくする若手がどんどん増えてくることを願ってやまない。
 
 (札幌医科大学 地域医療総合医学講座 松浦武志)

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「3月の三水会」
3月13日、札幌医大で、ニポポ研修医の振り返りの会が行われた。稲熊良仁助教が司会進行。後期研修医:1名。他:8名。今回は第三水曜日が休日のため、第二水曜日に開催。
 
ある研修医の経験症例。整形外科・形成外科で研修中。外来研修の症例について振り返り。
 
研修医から振り返り1題。
50歳男性。咽頭痛、腹痛で始まり、風邪にかかったと思っていた。その後、胸骨の裏側へと移動する背部痛になる。36.5℃、背部痛から、大動脈乖離、虚血性歯疾患を否定するため、両側の血圧を測定し、造影CTを撮影。Marfan症候群のような所見なし。解離性大動脈瘤が判明。専門医のいる病院に紹介した。
大動脈瘤について振り返った。分類。予後不良で致死率は1-2%。
 
クリニカル・パール:移動する激しい胸背部痛など大動脈乖離を疑った場合には、速やかに造影CTを行う。大動脈乖離は多彩な症状を呈する。突然発症の病歴が大切(問いかける力)。大動脈弓の乖離は、あご、頸の痛みのことがある。
 
研修終了生からの報告。
介護型療養型老人施設+クリニックの紹介。慢性期の医療。感染症治療、ターミナルケア。看取り、湿布のついでに降圧剤、風邪、点滴を希望。
困っていること:遠方の専門医からもらった薬の処方依頼、調剤薬局からの余計なアドバイス(影響力が強い)。接骨医からのレントゲン依頼。中途半端な外傷患者への固定処置。
 
認知症患者に対する抗凝固療法
80歳代男性。心房細動、慢性心不全、COPD,認知症、難聴、中肉中背。訪問診療中。ADLは部分介助。時に尿失禁。ワーファリン2.25mg/日でPT-INR;1.49-3.2
どこまで治療すべきか?
調べたこと:CHADS2 スコアが  0点なら抗凝固療法はしない。80歳以上の患者。高齢者でも転倒しないような工夫をすれば、ワーファリンは使用できる。医学的適応はあるが、社会的適応があるかどうか判断が難しい。
 
原因不明の腎不全
70歳代女性。統合失調症で服薬を続けている。高血圧の既往。最近、口内アフターがあり、バルトレックスを処方された。歩行がおかしい。Cre:6,BUN:50,UA:10, 尿所見は乏しい。電解質:正常範囲。両側腎はやや腫大。軽度のシドーシス。ESR:20/h, ANCA(-),3日間血液透析を行ったら、劇的に改善した。原因は薬剤か?
今回から、経験した症例を即、コンピュータで調べながら科学的根拠に迫り、クリニカル・ジャズをする模索を始めた。(山本和利)

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プロフィール
北海道の地域医療を支える総合診療医の養成を目指す後期研修プログラム「ニポポ」を支える北海道プライマリ・ケアネットワーク代表理事のブログです。
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