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「8月の三水会」
8月15日、札幌医大で、ニポポ研修医の振り返りの会が行われた。稲熊良仁助教が司会進行。後期研修医:2名。 初期研修3名。他:7名。
研修医から振り返り4題。
ある初期研修医。外来症例。レッグストレッチャー後に股関節痛で受診、恥坐骨骨折が判明。ワクチン接種後の局所炎症。発熱・意識障害で受診し、肺膿瘍で入院。右上視野がギラギラする女性が受診、片頭痛の可能性が高い。ウインナーをのどに詰まらせた中年旅行者。発熱・腹痛・粘血便で受診し、キャンピロバクター腸炎の診断。自動車事故によるCPAの少年.
13歳女性。腹部全体のチクチク感。抗菌薬で改善せず、経過観察のため入院。便は緩い。浣腸後も痛みの軽快はない。臍部から右下腹部に圧痛。尿・血液検査で異常なし。アルバラド・スコアは2点。XPで大腸ガスが著明。
CTでリンパ節が腫脹している。腸間膜リンパ節炎と診断した(虫垂炎より内側が痛む。腸腰筋の内側。自然治癒する。9-15歳に多い。エルシニアが原因となることが多い)。担当医の反省としては、鑑別診断にあげたものが少なく、機能性の腸障害と診断しかけたことである。この年代の下腹部痛としては虫垂炎、尿路感染症、卵巣捻転、シェンラインヘノッホ紫斑病が多い。コメント:診断能力を高めるにはエコーと身体診察を繰り返すことが重要である。
ある初期研修医。登山中の滑落。発熱を主訴とした歯肉炎。旅行者の腹痛。眼窩付近の虫刺性皮膚炎。
失神で受診した31歳男性。マラソン大会に参加中に失神。体温39度で、酸素6L/分投与下でSaO2;92%。
BP;92/60mmHg、呼吸数:54/m.嘔吐、発汗著明。下肢の痙攣を認めた。熱中症と診断。冷却、補液で対応。
8月15日、札幌医大で、ニポポ研修医の振り返りの会が行われた。稲熊良仁助教が司会進行。後期研修医:2名。 初期研修3名。他:7名。
研修医から振り返り4題。
ある初期研修医。外来症例。レッグストレッチャー後に股関節痛で受診、恥坐骨骨折が判明。ワクチン接種後の局所炎症。発熱・意識障害で受診し、肺膿瘍で入院。右上視野がギラギラする女性が受診、片頭痛の可能性が高い。ウインナーをのどに詰まらせた中年旅行者。発熱・腹痛・粘血便で受診し、キャンピロバクター腸炎の診断。自動車事故によるCPAの少年.
13歳女性。腹部全体のチクチク感。抗菌薬で改善せず、経過観察のため入院。便は緩い。浣腸後も痛みの軽快はない。臍部から右下腹部に圧痛。尿・血液検査で異常なし。アルバラド・スコアは2点。XPで大腸ガスが著明。
ある初期研修医。登山中の滑落。発熱を主訴とした歯肉炎。旅行者の腹痛。眼窩付近の虫刺性皮膚炎。
失神で受診した31歳男性。マラソン大会に参加中に失神。体温39度で、酸素6L/分投与下でSaO2;92%。
ショック・バイタルの補正に成功。しかし、その後一時的に呼びかけに反応しなくなった。血液検査で腎前性腎不全の所見であった。
考察:熱中症は増えている。高温下で激しい運動、体調不良、肥満、脱水、抗コリン薬、抗てんかん薬で誘発しやすい。症状として頻脈、低血圧、脱水、失神、大量発汗、悪心、筋痙攣を起こす。
突然の意識障害の原因は何か?器質的な異常がないか精査すべきかどうか意見が分かれた。
ある研修医。外来症例。トウモロコシによる食餌性イレウス。再発性膵炎。急性アルコール中毒。蚊咬傷による過換気症候群。呼吸困難を主訴に受診しCTで見つかった食道憩室。コメント:主訴と最終診断を一致させる努力をすること。
26歳女性。腹部全体の痛み。妊娠反応は陽性。前医で子宮外妊娠ではないという説明を受けていた。ズキズキとした激痛。イレウスによる入院歴あり。バイタル問題なし。腹部全体に圧痛。WBC;7100, Hb10.1,腹部エコーでダ
考察:熱中症は増えている。高温下で激しい運動、体調不良、肥満、脱水、抗コリン薬、抗てんかん薬で誘発しやすい。症状として頻脈、低血圧、脱水、失神、大量発汗、悪心、筋痙攣を起こす。
突然の意識障害の原因は何か?器質的な異常がないか精査すべきかどうか意見が分かれた。
ある研修医。外来症例。トウモロコシによる食餌性イレウス。再発性膵炎。急性アルコール中毒。蚊咬傷による過換気症候群。呼吸困難を主訴に受診しCTで見つかった食道憩室。コメント:主訴と最終診断を一致させる努力をすること。
26歳女性。腹部全体の痛み。妊娠反応は陽性。前医で子宮外妊娠ではないという説明を受けていた。ズキズキとした激痛。イレウスによる入院歴あり。バイタル問題なし。腹部全体に圧痛。WBC;7100, Hb10.1,腹部エコーでダ
疑いで緊急手術を行い、子宮外妊娠が判明した。考察:妊婦への被爆を考えたとき、どうすべきか?産婦人科の診療ガイドラインがある。10週までは50mgy では奇形は増えない(骨盤CT1回で79mGy)。必要と判断したら検査を躊躇しない
。コ
メント:経膣エコーをすべきであった。
ある研修医。外来症例。偽痛風。食欲低下で受診した誤嚥性肺炎。副鼻腔炎による頭痛。
72歳代男性。尿閉、PSA高値(1006)で泌尿器科入院。直腸診で硬結を触知。前立腺がんと診断され、遠隔転移の可能性が高いため、ホルモン療法を開始した。抗ホルモン薬と睾丸除去術を施行。遺伝的要因がリスク。直腸診、PSA,経直腸エコーでスクリーニングすることが大切である。
今回は、臨床推論を中心とした話題が多かった。正確な診断の上に治療がなされ、加えて患者背景や患者さんの思いを汲み取る医療実践をすることを願っている。(山本和利)
ある研修医。外来症例。偽痛風。食欲低下で受診した誤嚥性肺炎。副鼻腔炎による頭痛。
72歳代男性。尿閉、PSA高値(1006)で泌尿器科入院。直腸診で硬結を触知。前立腺がんと診断され、遠隔転移の可能性が高いため、ホルモン療法を開始した。抗ホルモン薬と睾丸除去術を施行。遺伝的要因がリスク。直腸診、PSA,経直腸エコーでスクリーニングすることが大切である。
今回は、臨床推論を中心とした話題が多かった。正確な診断の上に治療がなされ、加えて患者背景や患者さんの思いを汲み取る医療実践をすることを願っている。(山本和利)
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「不安とうつ」
東京で開催された第14回身体疾患と不安・抑うつ研究会で聴講した内容を記す。
東邦大学天野雄一氏は「身体症状を主訴とした不安・抑うつ状態を伴う患者への対応について」。
症例:動悸と息切れが主訴の19歳女性。対応:パニック障害、社交不安障害。エシスタプラム10mg。ストレスへの気付きが乏しい。運動や生活指導を中心に対応。
背景要因:社交不安障害→薬物療法。
発症要因:大学入学→不安増強
持続要因:ストレスへの気付きが乏しい→運動。

症例;下痢が主訴の49歳女性。
背景:職場での異動。チーム内で衝突。仲間はずれ。休職中。現状を受け入れるのを拒否。薬物療法を開始。共感的な対応。自己解決を促したところ、著しい改善が見られた。
心理的サポートを通じて現状を自らの問題として捉えることが解決に繋がった。
症例:謳気、めまいの67歳男性。検査上異常なし。震災で実家が被災。仕事が激減。トイレ恐怖がある。身体表現性障害。適応障害から鬱へ移行。薬物療法。散歩。受診間隔を短縮し繰り返し保証を与える。多面的な対応が治療に有用である。
背景要因、発症要因、持続要因の3つに分けて分析する方法を取り入れ、学生指導にも導入しているという。
岩手医大鈴木順氏は「悲嘆と不安・抑うつを考える‐東日本大震災に関連した症状を通じて‐」。62歳男性。不眠、不安、抑うつ気分。大震災に遭遇。自営業が傾く。高血圧以外、問題なし。怒り、不安が強い。うつ病、逆流性食道炎と診断し、抗うつ薬を処方された。身体症状は改善したが、落ち着きがない。薬物を増量し、徐々に改善。
「こころのケアセンター」で経過を診ている75歳男性。4人の家族を津波で失った。災害では様々なものが失われる。悲嘆反応、抑うつ状態と診断。傾聴、共感、睡眠薬、漢方薬で対応。
悲嘆については、3つに分類される。1)急性悲嘆、2)統合された悲嘆(回復後に永久に残る悲嘆)、3)複雑な悲嘆(癒されず続く悲嘆)(by M.K. Shear)。遺族のナラティブの尊重、寄り添う、相手に合わせる、等が重要である。完全に治ることが目標ではない。
悲嘆に抗うつ薬を処方すべきか? 悲しい話に涙を流してもよいのか?(患者が苦しんでいるなら処方してよいという意見がフロアから出された)大震災被災後に苦しんでいる人たちの問題に真摯に対応していることがヒシヒシと伝わってくる発表であった。
埼玉社会保険病院中本智恵美氏は「RA患者における不安・抑うつについて」抑うつを抱える率が高い(43%)。病状の悪化・期間に比例して抑うつスコアが増加する(炎症反応とは相関しない)。
勝山診療所穂坂路男氏は「プライマリケアにおける身体疾患と不安・抑うつ」。たくさんの臨床研究を行っている。呼吸困難感ヘジアゼパンの効果を検討。検査データは改善しないのに、呼吸困難感は低下した。
抑うつ、活動性、ステロイド投与量がRAに関連。うつ症状のある患者は生命予後が悪化する。若い、ステロイド量が少ない、QOLがよい、抑うつが少ないと生物学的製剤がよく効く。RAにシュグレン症候群が合併すると抑うつになる率が増加する。
患者がプライマリケア医から専門医までに至る道筋を紹介した。プライマリケア医はどんな訴えでもまずは対応し、こころへの関心を高めることが重要である。患者さんははじめにプライマリケア医を身体症状で受診する(疾病行動)→プライマリケア医がこころの障害を発見する→精神医療サービスに紹介→精神病院へ紹介、となる。
特別講演は貝谷久宜氏の「不安・抑うつ症候群」
パニック障害に伴ううつ病をどのように治すか? パニック障害は不安障害のなれの果てである。その後からうつが出てくる。これは治りにくい。社交不安障害(劣等感がある)があるとうつになり易い。特に3つ以上の不安障害があるとなりやすい。パニック障害とうつは遺伝的に相関が高い。時間軸を考慮する必要がある。パニック障害は非定型うつ病に似る。これは対人関係における拒絶感への過敏、鉛様麻痺、仮眠、過食が特徴的である。そして幼稚化が起こる。短期間の躁状態がある(2日間以内)。
氏の提唱する「不安・抑うつ発作」を持つ人は、泣く、自己嫌悪、陰性感情、フラッシュバック、自傷行為、過食、遁走、大量服薬、等を起こす。非定型うつ病にはPTSDの診断基準の80%が当てはまる。拒絶過敏症が中核にある。ノルアドレナリン活動の増加が関係している(褐色細胞腫の患者にも「不安・抑うつ発作」が起こった)。治療の一例として、フルボキサミン150-300mgを1年間続けた例を提示された。そうすることで新しい人格が出来上がるそうだ。
今回の収穫は、不安やうつの患者を診るときには、背景要因、発症要因、持続要因の3つに分けて考えること、災害で悲嘆にくれる患者さんに対して、完全に治ることを目標にせず、遺族のナラティブの尊重、寄り添う、相手に合わせる、ような対応をすること、パニック障害の中核をなすのは、人関係における拒絶感への過敏である、等を知り得たことである。
東京で開催された第14回身体疾患と不安・抑うつ研究会で聴講した内容を記す。
東邦大学天野雄一氏は「身体症状を主訴とした不安・抑うつ状態を伴う患者への対応について」。
症例:動悸と息切れが主訴の19歳女性。対応:パニック障害、社交不安障害。エシスタプラム10mg。ストレスへの気付きが乏しい。運動や生活指導を中心に対応。
背景要因:社交不安障害→薬物療法。
発症要因:大学入学→不安増強
持続要因:ストレスへの気付きが乏しい→運動。
症例;下痢が主訴の49歳女性。
背景:職場での異動。チーム内で衝突。仲間はずれ。休職中。現状を受け入れるのを拒否。薬物療法を開始。共感的な対応。自己解決を促したところ、著しい改善が見られた。
心理的サポートを通じて現状を自らの問題として捉えることが解決に繋がった。
症例:謳気、めまいの67歳男性。検査上異常なし。震災で実家が被災。仕事が激減。トイレ恐怖がある。身体表現性障害。適応障害から鬱へ移行。薬物療法。散歩。受診間隔を短縮し繰り返し保証を与える。多面的な対応が治療に有用である。
背景要因、発症要因、持続要因の3つに分けて分析する方法を取り入れ、学生指導にも導入しているという。
岩手医大鈴木順氏は「悲嘆と不安・抑うつを考える‐東日本大震災に関連した症状を通じて‐」。62歳男性。不眠、不安、抑うつ気分。大震災に遭遇。自営業が傾く。高血圧以外、問題なし。怒り、不安が強い。うつ病、逆流性食道炎と診断し、抗うつ薬を処方された。身体症状は改善したが、落ち着きがない。薬物を増量し、徐々に改善。
「こころのケアセンター」で経過を診ている75歳男性。4人の家族を津波で失った。災害では様々なものが失われる。悲嘆反応、抑うつ状態と診断。傾聴、共感、睡眠薬、漢方薬で対応。
悲嘆については、3つに分類される。1)急性悲嘆、2)統合された悲嘆(回復後に永久に残る悲嘆)、3)複雑な悲嘆(癒されず続く悲嘆)(by M.K. Shear)。遺族のナラティブの尊重、寄り添う、相手に合わせる、等が重要である。完全に治ることが目標ではない。
悲嘆に抗うつ薬を処方すべきか? 悲しい話に涙を流してもよいのか?(患者が苦しんでいるなら処方してよいという意見がフロアから出された)大震災被災後に苦しんでいる人たちの問題に真摯に対応していることがヒシヒシと伝わってくる発表であった。
埼玉社会保険病院中本智恵美氏は「RA患者における不安・抑うつについて」抑うつを抱える率が高い(43%)。病状の悪化・期間に比例して抑うつスコアが増加する(炎症反応とは相関しない)。
勝山診療所穂坂路男氏は「プライマリケアにおける身体疾患と不安・抑うつ」。たくさんの臨床研究を行っている。呼吸困難感ヘジアゼパンの効果を検討。検査データは改善しないのに、呼吸困難感は低下した。
抑うつ、活動性、ステロイド投与量がRAに関連。うつ症状のある患者は生命予後が悪化する。若い、ステロイド量が少ない、QOLがよい、抑うつが少ないと生物学的製剤がよく効く。RAにシュグレン症候群が合併すると抑うつになる率が増加する。
患者がプライマリケア医から専門医までに至る道筋を紹介した。プライマリケア医はどんな訴えでもまずは対応し、こころへの関心を高めることが重要である。患者さんははじめにプライマリケア医を身体症状で受診する(疾病行動)→プライマリケア医がこころの障害を発見する→精神医療サービスに紹介→精神病院へ紹介、となる。
特別講演は貝谷久宜氏の「不安・抑うつ症候群」
パニック障害に伴ううつ病をどのように治すか? パニック障害は不安障害のなれの果てである。その後からうつが出てくる。これは治りにくい。社交不安障害(劣等感がある)があるとうつになり易い。特に3つ以上の不安障害があるとなりやすい。パニック障害とうつは遺伝的に相関が高い。時間軸を考慮する必要がある。パニック障害は非定型うつ病に似る。これは対人関係における拒絶感への過敏、鉛様麻痺、仮眠、過食が特徴的である。そして幼稚化が起こる。短期間の躁状態がある(2日間以内)。
氏の提唱する「不安・抑うつ発作」を持つ人は、泣く、自己嫌悪、陰性感情、フラッシュバック、自傷行為、過食、遁走、大量服薬、等を起こす。非定型うつ病にはPTSDの診断基準の80%が当てはまる。拒絶過敏症が中核にある。ノルアドレナリン活動の増加が関係している(褐色細胞腫の患者にも「不安・抑うつ発作」が起こった)。治療の一例として、フルボキサミン150-300mgを1年間続けた例を提示された。そうすることで新しい人格が出来上がるそうだ。
今回の収穫は、不安やうつの患者を診るときには、背景要因、発症要因、持続要因の3つに分けて考えること、災害で悲嘆にくれる患者さんに対して、完全に治ることを目標にせず、遺族のナラティブの尊重、寄り添う、相手に合わせる、ような対応をすること、パニック障害の中核をなすのは、人関係における拒絶感への過敏である、等を知り得たことである。
「SAPHO 症候群」
胸痛を主訴に来院される患者さんは多い。胸部XP・CTや心電図で
心臓・肺由来の胸痛ではないと診断された後、どうしたらよいかと戸惑っている患者さんもいる。そうなると食道、上部消化管、頸部・頭部の疾患がないか見極める必要があろうが、忘れてならないのは筋骨格系疾患である。大人の胸痛の原因の10-15%を占める。胸壁に圧痛があることで虚血性心疾患や肺塞栓症は除外できないということだが、筋骨格性由来の疼痛である可能性は高まる。
筋骨格系疾患で胸痛の原因として多いのが、肋軟骨炎、下部肋骨疼痛症候群(中年女性の肋骨縁上の圧痛、)がある。その他、TIetze症候群等、肋骨、胸骨椎体に痛みを引き起こす症候群もある。
リウマチ関連の筋骨格系の痛みの原因として、線維筋痛症、リウマチ、硬直性脊椎炎、乾癬性脊椎炎等が挙がる。
頻度は多くないが、掌蹠膿疱症を持つ患者が前胸部痛を訴えたとき、それに関連する骨関節炎を念頭に置く必要がある。日本やヨーロッパからの報告が多く、SAPHO 症候群と呼ばれている。Synovitis(滑膜炎), Acne(にきび), pustulosis(膿疱), Hyperostosis(骨化症), Osteomyelitis(骨髄炎)の頭文字をとった呼び名である。これはリウマチ反応陰性の脊椎炎に似ているということだ。
前胸部に起こりやすく、胸骨や鎖骨の圧痛、腫脹、疼痛を起こす。著しい例ではXPで骨の増大が確認できる。ときに顎骨や長幹骨、椎体にも及ぶことがある。
病理は無菌性骨髄炎に類似している。病因は不明。経過としては、一部は自然寛解するが、大部分は寛解・再発を慢性に繰り返すようだ。診断が付かず、慢性疼痛性障害として経過観察されているケースもある。
治療としてはNSAID,コルヒチン、ステロイド、sulfasalazine, メトトリキセート、レチノイド等が挙がっている。抗菌薬の効果は議論が分かれている。最近では、ビフォスフォネートやinfiximabなどが試みられている(ランダム化研究ではない)。
扁桃腺炎がある場合には、扁桃摘出を勧める医師もいる。(山本和利)
胸痛を主訴に来院される患者さんは多い。胸部XP・CTや心電図で
筋骨格系疾患で胸痛の原因として多いのが、肋軟骨炎、下部肋骨疼痛症候群(中年女性の肋骨縁上の圧痛、)がある。その他、TIetze症候群等、肋骨、胸骨椎体に痛みを引き起こす症候群もある。
リウマチ関連の筋骨格系の痛みの原因として、線維筋痛症、リウマチ、硬直性脊椎炎、乾癬性脊椎炎等が挙がる。
頻度は多くないが、掌蹠膿疱症を持つ患者が前胸部痛を訴えたとき、それに関連する骨関節炎を念頭に置く必要がある。日本やヨーロッパからの報告が多く、SAPHO 症候群と呼ばれている。Synovitis(滑膜炎), Acne(にきび), pustulosis(膿疱), Hyperostosis(骨化症), Osteomyelitis(骨髄炎)の頭文字をとった呼び名である。これはリウマチ反応陰性の脊椎炎に似ているということだ。
前胸部に起こりやすく、胸骨や鎖骨の圧痛、腫脹、疼痛を起こす。著しい例ではXPで骨の増大が確認できる。ときに顎骨や長幹骨、椎体にも及ぶことがある。
病理は無菌性骨髄炎に類似している。病因は不明。経過としては、一部は自然寛解するが、大部分は寛解・再発を慢性に繰り返すようだ。診断が付かず、慢性疼痛性障害として経過観察されているケースもある。
治療としてはNSAID,コルヒチン、ステロイド、sulfasalazine, メトトリキセート、レチノイド等が挙がっている。抗菌薬の効果は議論が分かれている。最近では、ビフォスフォネートやinfiximabなどが試みられている(ランダム化研究ではない)。
扁桃腺炎がある場合には、扁桃摘出を勧める医師もいる。(山本和利)
「臥位呼吸」
70歳台女性患者のことで相談を受けた。これまで老人ホームで寝たり起きたりしていたが、数日前から喘鳴が強くなった。糖尿病、高血圧があり、大腿骨頸部骨折の手術を2年前に受けている。奇妙な点は、臥位では喘鳴が消えるのに、座位で喘鳴が悪化する。酸素飽和度が92%と低下していることであった。
一般に喘鳴は座位で悪化することが多い。これは起座呼吸(0rthopnea)と呼ばれており、うっ血性心不全、COPD,喘息等が悪化した患者にみられる。この病態機序は臥位になったときに下肢・内臓の血液が体循環に戻り負担が増えるからと説明されている。最近の研究では、心不全の起座呼吸を起こすメカニズムとして、気道抵抗の増加、呼気流量の低下、横隔膜エネルギー消費の増加等が挙げられている。うっ血性心不全に対する起座呼吸の感度は37.6%、特異度は89.8%という記述がある(陽性尤度比:3.6)。
この患者さんは、軽度の炎症反応を示したが、胸部XP,CTで異常を認めなかった。喉頭鏡でも閉塞はなかった。しばらく抗菌薬治療を試みみたが、座位によっての喘鳴は続いていた。
70歳台女性患者のことで相談を受けた。これまで老人ホームで寝たり起きたりしていたが、数日前から喘鳴が強くなった。糖尿病、高血圧があり、大腿骨頸部骨折の手術を2年前に受けている。奇妙な点は、臥位では喘鳴が消えるのに、座位で喘鳴が悪化する。酸素飽和度が92%と低下していることであった。
一般に喘鳴は座位で悪化することが多い。これは起座呼吸(0rthopnea)と呼ばれており、うっ血性心不全、COPD,喘息等が悪化した患者にみられる。この病態機序は臥位になったときに下肢・内臓の血液が体循環に戻り負担が増えるからと説明されている。最近の研究では、心不全の起座呼吸を起こすメカニズムとして、気道抵抗の増加、呼気流量の低下、横隔膜エネルギー消費の増加等が挙げられている。うっ血性心不全に対する起座呼吸の感度は37.6%、特異度は89.8%という記述がある(陽性尤度比:3.6)。
いろいろ考えた末、肺塞栓症ではないかと思い至った。肺塞栓の診断基準であるWell’s Scoreが3点である。Dダイマーを測定してもらったところ、やや正常値を越えていた。そこで肺の造影CTで確認をしてもらったが、
肺塞栓症の所見は認めなかった。その後、症状は徐々に改善したという。
最近手にした『mechanisms of clinical signs』という書籍によると臥位呼吸(platypnea)として記述がなされている。原因の1つは心臓内に右・左シャントが起こるためで、ASD,PFD等の先天性心疾患、肺切除が挙げられる。もうひとつの原因は、肺高血圧や右房圧の上昇であり、肝肺症候群、呼吸器疾患、COPD,肺塞栓症、ARDS等がある。静脈から動脈への血流シャントがその機序と説明されている。
ときに、肝硬変患者で酸素飽和度が著しく低い患者が出会うことがある。これは当に肝肺症候群であり、その機序は1)びまん性の肺内シャント、2)血管収縮による換気不良、3)V/Qミスマッチ、4)胸水や横隔膜機能低下が挙げられている。
まれであるが、臥位呼吸を見たら、右・左シャントや肺高血圧等の基礎疾患が潜んでいないか疑ってみる必要があるようだ。(山本和利)
最近手にした『mechanisms of clinical signs』という書籍によると臥位呼吸(platypnea)として記述がなされている。原因の1つは心臓内に右・左シャントが起こるためで、ASD,PFD等の先天性心疾患、肺切除が挙げられる。もうひとつの原因は、肺高血圧や右房圧の上昇であり、肝肺症候群、呼吸器疾患、COPD,肺塞栓症、ARDS等がある。静脈から動脈への血流シャントがその機序と説明されている。
ときに、肝硬変患者で酸素飽和度が著しく低い患者が出会うことがある。これは当に肝肺症候群であり、その機序は1)びまん性の肺内シャント、2)血管収縮による換気不良、3)V/Qミスマッチ、4)胸水や横隔膜機能低下が挙げられている。
まれであるが、臥位呼吸を見たら、右・左シャントや肺高血圧等の基礎疾患が潜んでいないか疑ってみる必要があるようだ。(山本和利)
「緩和ケアの基本(2)」
7月18日、札幌医科大学においてニポポ・スキルアップ・セミナーが行われた。講師は勤医協中央病院の小林良裕先生である(3回シリーズの2回)。テーマは「緩和ケアの基本」で,参加者は15名。
今回は、「がん疼痛のマネジメント」の各論である。
がん患者の70%が痛みで困っている。
がん性疼痛の特徴
・主観的な体験
・がん診断時に25-30%、終末期に70-80%に出現
・15%の患者が1か所、60%が2か所、25%が4か所以上の疼痛を自覚する。
・原因
がんによる疼痛
がん治療による疼痛
がんに関連のない疼痛
オンコロギー・エマージェンシー;腸閉塞、病底骨折、圧迫
・全人的な苦痛;身体的、社会的、精神的、スピリッチュアル
痛みを評価するスケールが大切。鎮痛の評価に使いたいからである。
がん性疼痛の分類
・体性痛:部位が限局、明確(うずく、差し込む、鋭い痛み)
・内臓痛:局在が乏しく、不明確(押される、鈍い)
・神経因性疼痛:しびれ、電気が走る、焼けつく
疼痛コントロールの目標
1.痛みに妨げられずに夜は良眠できる状態
2.痛みで安静が妨げられない状態
3.痛みにより体動が妨げられない状態
がん治療の原則
・経口剤
・時刻を決める
7月18日、札幌医科大学においてニポポ・スキルアップ・セミナーが行われた。講師は勤医協中央病院の小林良裕先生である(3回シリーズの2回)。テーマは「緩和ケアの基本」で,参加者は15名。
今回は、「がん疼痛のマネジメント」の各論である。
がん患者の70%が痛みで困っている。
がん性疼痛の特徴
・主観的な体験
・がん診断時に25-30%、終末期に70-80%に出現
・15%の患者が1か所、60%が2か所、25%が4か所以上の疼痛を自覚する。
・原因
がんによる疼痛
がん治療による疼痛
がんに関連のない疼痛
オンコロギー・エマージェンシー;腸閉塞、病底骨折、圧迫
・全人的な苦痛;身体的、社会的、精神的、スピリッチュアル
痛みを評価するスケールが大切。鎮痛の評価に使いたいからである。
がん性疼痛の分類
・体性痛:部位が限局、明確(うずく、差し込む、鋭い痛み)
・内臓痛:局在が乏しく、不明確(押される、鈍い)
・神経因性疼痛:しびれ、電気が走る、焼けつく
疼痛コントロールの目標
1.痛みに妨げられずに夜は良眠できる状態
2.痛みで安静が妨げられない状態
3.痛みにより体動が妨げられない状態
がん治療の原則
・経口剤
・時刻を決める
・痛みの強さに応じた薬剤
・患者ごとに適量を決める
・服用に際して細かな配慮
・鎮痛補助薬を用いる
三段階除痛ラダ―に則る。(1.非オピオイド性鎮痛薬(NSAIDs, アセトアミノフェン)、2.弱オピオイド、3.強オピオイド)。日本では医療用麻薬の使用がまだまだ少ない。
第一段階:NSAID
プロスタグランジンが生成される過程の酵素であるシクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害する。がん性疼痛に対するベースライン的役割。骨転移による疼痛に対して。疼痛増悪時のレスキューの一つの選択として。
アセトアミノフェン
中枢性の鎮痛と解熱作用を有する。一日2400-4000mgの使用が可能。一日4回が原則。NSAIDと相乗効果がある。
第二段階;弱オピオイド
ペンタジンは使わないこと(作用時間が短く、薬物依存になりやすい)。受容体は3つ、μ、κ、δ。コデインは10%が脱メチル化されてモルヒネになる。レペタン、トラマールは麻薬ではない(処方しやすい)。
第三段階:強オピオイド
モルヒネ、フェンタニール、オキシコドン(将来メサドン、ハイドロモルヒンも解禁されよう)
腎機能障害にモルヒネ、コデインは避ける、呼吸困難にはフェンタニールを避ける。便秘にモルヒネを避ける。静脈注入によるレスキューは2時間量を早送りする。3回以上レスキューするなら翌日から増量する。オキシコドンは腎障害にも使える。
先行する非オピオイド性鎮痛薬は中断しない。経口モルヒネ60mg・日で50%の患者に効く。増量は30-50%。副作用を考える。
オピオイド・ローテーション:有害作用をコントロールできない場合、別のオピオイドに変えて等価量の50-75%で開始する方法。
オピオイドが効きにくいとき、鎮痛補助薬を用いる。
・三環系抗鬱薬:ノリトレン、アモキサン、トリプタノール、トフラニールを小量使用。
・抗けいれん薬;リリカ、リボトリール、デパケンを少量から開始する。
・抗不整脈薬:メキシチール、タンボコール、キシロカイン
・ケタミン
・放射線治療:骨転移症例に有効である。
今回は、作用機序や使い方を理論的に話してもらった。次回は、疼痛以外の症状への対応について、事例を中心に話してもらう予定である。
・患者ごとに適量を決める
・服用に際して細かな配慮
・鎮痛補助薬を用いる
三段階除痛ラダ―に則る。(1.非オピオイド性鎮痛薬(NSAIDs, アセトアミノフェン)、2.弱オピオイド、3.強オピオイド)。日本では医療用麻薬の使用がまだまだ少ない。
第一段階:NSAID
プロスタグランジンが生成される過程の酵素であるシクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害する。がん性疼痛に対するベースライン的役割。骨転移による疼痛に対して。疼痛増悪時のレスキューの一つの選択として。
アセトアミノフェン
中枢性の鎮痛と解熱作用を有する。一日2400-4000mgの使用が可能。一日4回が原則。NSAIDと相乗効果がある。
第二段階;弱オピオイド
ペンタジンは使わないこと(作用時間が短く、薬物依存になりやすい)。受容体は3つ、μ、κ、δ。コデインは10%が脱メチル化されてモルヒネになる。レペタン、トラマールは麻薬ではない(処方しやすい)。
第三段階:強オピオイド
モルヒネ、フェンタニール、オキシコドン(将来メサドン、ハイドロモルヒンも解禁されよう)
腎機能障害にモルヒネ、コデインは避ける、呼吸困難にはフェンタニールを避ける。便秘にモルヒネを避ける。静脈注入によるレスキューは2時間量を早送りする。3回以上レスキューするなら翌日から増量する。オキシコドンは腎障害にも使える。
先行する非オピオイド性鎮痛薬は中断しない。経口モルヒネ60mg・日で50%の患者に効く。増量は30-50%。副作用を考える。
オピオイド・ローテーション:有害作用をコントロールできない場合、別のオピオイドに変えて等価量の50-75%で開始する方法。
オピオイドが効きにくいとき、鎮痛補助薬を用いる。
・三環系抗鬱薬:ノリトレン、アモキサン、トリプタノール、トフラニールを小量使用。
・抗けいれん薬;リリカ、リボトリール、デパケンを少量から開始する。
・抗不整脈薬:メキシチール、タンボコール、キシロカイン
・ケタミン
・放射線治療:骨転移症例に有効である。
今回は、作用機序や使い方を理論的に話してもらった。次回は、疼痛以外の症状への対応について、事例を中心に話してもらう予定である。
プロフィール
北海道の地域医療を支える総合診療医の養成を目指す後期研修プログラム「ニポポ」を支える北海道プライマリ・ケアネットワーク代表理事のブログです。
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