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3月5日、ニポポプログラムの研修医である服部晃好先生の研修評価に山本和利、日光ゆかりの2名で富良野協会病院に出かけた。
前日に東京から旭川空港経由で富良野入り。この時期は天候が安定せず、到着が大幅に遅延。空港からの富良野行き最終便に乗ることができずタクシーを利用。予定外の出費となる。
11時開始。病院長、小児科医長、整形外科部長、病棟看護師、薬剤師、放射線技師、ソーシャル・ワーカー、事務長が参加して360度評価法を行った。約40分にわたり意見交換が行われたが、各部門の評価はどれも非常に高く、問題は見当たらないということであった。どの部署からもコミュニケーション能力の高さを賞めていただいた。その後、山本、大門医師、服部医師で総合内科に入院患者さんの治療法について検討を行った。
帰りはJR経由で帰途についた。JR富良野駅には「北の国から」のテーマ曲が流れ、北海へそ踊りの人形が飾られている。
服部先生、富良野での研修ももう少し。過労にならないように気を津つけて頑張ってください。指導医の先生方、職員の方々、今後もよろしくお願いします。(山本和利)
2月28日、ニポポプログラムの研修医である濱田修平先生と岸野宏貴先生の研修評価に山本和利、日光ゆかりの2名で留萌市立病院に出かけた。札幌駅から特急に乗って約1時間で深川駅に着き、そこから一両編成の電車で約60分。あたり周辺は雪景色。
17時半から会議室で開始。病院長、副院長、外科部長、病棟看護師、薬剤師、事務長が参加する360度評価法である。看護師さんの評価が意外に厳しいことに少し驚いたが、医師からの評価は非常に高かった。研修内容が欲張りすぎており、忙しいスケジュールになりすぎていたようだ。病棟業務、外来業務、診療所での往診、救急や夜間入院患者の受け入れ、健康教育と論文作成、等。このような忙しさが病棟に居る時間を減らし、先の看護師さんの評価につながったのかもしれない。約1時間にわたり意見交換が行われた。このようなプロセスを一つ一つ踏みながら、研修プログラムの質を高めてゆきたい。
山本は留萌駅のそばの旅館に一泊し、翌朝帰途についた。JR留萌駅には巨大な「カズノコ」が陳列されていた。
濱田先生、岸野先生、留萌での研修、あと一ヶ月。頑張ってください。温かい目で見守ってくださっている職員の方々、住民の方々、ありがとうございます。(山本和利)
「感染症:違いがわかる大人になるために」
1月19日、札幌医科大学においてニポポ・スキルアップ・セミナーが行われた。講師は勤医協中央病院の石田浩之先生である。テーマは「感染症:違いがわかる大人になるために」である。参加者は18名である。
「入院の感染症について」問題を提示して、研修医や学生に訊いてゆく形式である。
診療の枠組み:臓器、細菌、抗菌薬の3つを考慮する。
「紛らわしい偽物たち」を区別できるなることを目標とする。4パターンを提示された。
最初に問題を表示し、最後に解答を掲載するので、時間のある方はじっくり考えてから後半を読んで欲しい。
1.下痢+嘔吐+発熱。
・冬、35歳男性。都市に在住。インフルエンザ様症状。家族内に同様の症状の人はいない。感染性腸炎として補液。翌日、息切れを自覚。数時間単位で悪化。軽度頻脈。頻呼吸。クラックルあり。
2.腹痛+高熱+下痢
・50歳男性。ノロウイルスを疑う胃腸炎が流行。家族も同様の症状。高熱、腹痛、水様下痢が加わった。発症前の2-5日に鶏肉を摂取していないかどうかを訊く。生に限らない。
3.湿性咳+高熱。
75歳男性。独居。脳梗塞の既往。嚥下障害。未治療で高熱が時折。肺野にクラックル聴取。XPで肺炎像。ヴァイタル・サインは安定。
4.頻呼吸+高熱。
75歳女性。急性腎盂炎を5回。4-5日前に排尿時痛。倦怠感。悪寒戦慄。乾性咳。意識清明。クラックルなし。酸素化障害がある。恥骨直上に圧痛。右CVA叩打痛あり。
振り返り5題。今年は「北海道の冬」の厳しさを実感している。
74歳男性。アルツハイマー型認知症。寝たきり。四肢拘縮。
喘鳴、発熱。SaO2:80%で肺炎と尿路感染と診断され、入院となった。全身の汚れがひどく、褥瘡もある。抗菌薬点滴で解熱。血液データは改善。嚥下機能の低下はないが、適宜吸引は必要であった。要介護5であるが、介護が入っていなかった。エアマットも勝手に返却されていた。ネグレクトを心配し娘を呼んで今後のことを相談した。施設入所を提案した。入所まで自宅療養となった。週2回の訪問看護を受け入れてくれた。ミキサー食を提案。
振り返り:家族に働かきかけることにより、患者QOLを上げることができた。キーパーソンである夫人の理解と協力を得るのに腐心したが、最後には夫人の態度に変化が見られた。経済的な面での困難さはなかった。「どんなサービスを利用すればよいのかわからない」という人が意外と多いのではないか。これまでのカンファランスには医師が参加していなかったが、医師が入ったことでコメディカルスタッフが盛り上がった。
クリニカル・パール:「使える人・モノ・制度は何でも使え!」。
42歳男性。多忙。1カ月間止まらない咳。痰。発熱なし。喫煙者。過膨張な肺。肺気腫と診断した。感冒薬処方と禁煙指導。1週間後、症状は改善なく再受診。吸入ステロイドを処方。1ヶ月後、改善ない。マイコプラズマ抗体は陰性。胸部CTで異常なし。
クラリスロマイシンを処方。百日咳抗体(山口株)を依頼したところ、陽性であった。
ここで百日咳のレビュー。
振り返り:慢性の咳は喫煙者では当たり前と考えてしまった。初期に血液検査をしなかった。鑑別診断に「百日咳」に入っていなかった。情報バイアス、感情の転移に注意する。クリニカル・パール:「慢性の咳の鑑別には百日咳を入れること」「鑑別診断の勉強を怠らないこと」「情報バイアス、感情の転移に注意すること」。
80歳代の女性。吹雪の中を救急車で来院。血尿・排尿痛があり、入院を希望したが、膀胱炎なので入院は不要と話したところ、訴えると言われてしまった。
学会発表をした「コホート研究」を報告。
2年目研修医が2年間の振り返りを行った。事例報告:アルコール臭のある78歳男性が救急車で受診。診察して泥酔と判断し、点滴をして翌朝に診察とした。血液検査の結果、低Na血症。家族から別の市の病院への転院を希望。そこに夫人が入院中。尿路感染症が判明。1週間後、幻視が出現。精神科受診したところ、アルコール離脱、脳委縮による認知症、薬物の副作用と診断。精神科への転院が決定。その矢先、自宅でみたいという申し出があり。
振り返り:ホリゾンの使い過ぎであった。家族との意思疎通が不十分であった。尿路感染症の管理が不十分であった。硬膜下血腫やビタミンB1欠乏の評価が遅れた。最初、単なる泥酔者と考えてしまった。
注意すべき救急受診患者:アルコール飲酒者、ステロイド内服者、糖尿病患者、高齢者、NSAID内服者。沢山の助言が得られた。
クリニカル・パール:「アルコール飲酒者は要注意!」
1年目研修医から学会での症例報告のプレゼンテーション。スライドの作り方、調べ方について沢山の助言がだされた。
(山本和利)
広場1-6を準備。時間経過に沿って紹介する。
広場2は「頭痛の患者さんがやってきた」講師:木村眞司先生。
○×△で答えてもらう。まず人物の年齢を当てる。鳥の名前。42歳の女性。頭痛でときどき寝込んでしまう(片頭痛)。35歳男性。時々吐く(片頭痛)。じっとしている(片頭痛)。毎晩痛くてのたうちまわる若い男性(群発頭痛)。一番多い頭痛(緊張型頭痛)。締め付けられる感じで肩こり(緊張型頭痛に特異的ではない)。時々起る頭痛(緊張型頭痛)。片頭痛で両側が痛む(40%)。片頭痛の性情は拍動性である(×)。
広場3-1は家庭医療シュミレーション体験。「胸痛の患者さんがやってきた」講師:松浦武志先生。
60歳男性。胸痛。苦悶様。この病気は何か(急性心筋梗塞)。72歳の男性。前胸部が引き裂かれるような胸痛。苦悶様。(解離性大動脈瘤)。21歳男性の胸痛。突然、息をするとき痛む、息苦しい(自然気胸)。年齢・性別・主訴・背景からおおよその疾患のあたりをつける。30歳男性。自衛隊員。シクシク痛む。食欲がない。便が黒い(消化管潰瘍)。16歳女性の胸痛。いろいろ調べてわからない。朝起きると胸痛(身体表現性障害)。家庭医は診断のスペシャリストである。
広場3-2は「腹痛の患者さんがやってきた」講師:小島一先生。27歳女性の下腹部痛。頻尿、発熱。月経、妊娠について訊く(骨盤内感染症)。鑑別診断は、PID,憩室炎、卵巣捻転、子宮外妊娠、虫垂炎、等。PCR検査をする。妊娠反応陰性。PIDに特異的な所見は?(頸部を動かした時の痛み)「SEXしていない」というひとは妊娠しない(NO)。その他のSTIのスクリーニング、パートナーの治療と教育が大事。27歳の女性に必要な健康に関することは無限にある!疾患だけを診るのではない。
広場3-3は「在宅シュミレーション体験(在宅医療を体験してみよう)」講師:安藤高志先生。人口10万人の都市の診療所。「家の中で転んで歩けない」という電話。ここでの注意:診察鞄の道具確認、患者宅へ電話、免許証、携帯電話、財布。家の前で注意:立地条件、家の広さ、隣との距離、入り口(重要)、駐車場所。家の中で着目:玄関の段差、狭くて暗い廊下、電気コード。 部屋の中で着目:襖の段差、敷物の隙間、暗さ。自宅で点滴するとき必要なもの:ハンガー(紐、画鋲)。家の中に飾られている物に着目する。病院とは違った視点でヘルス・アセスメントをする。
広場1はポスター発表。9のプログラムから発表があった。発表3分、質問2分。優秀なものを表彰。
広場4は公開講演「家庭医って何?(家庭医を知ってもらおう!)」 奈義ファミリークリニック所長 松下明先生の講演。 なぜ家庭医を目指したか?現在20年目。無医村で働くための専門科がない。そんなときRakelの「Family Medicine」という本に出会った。川崎医大総合診療部で5年。ミシガン州立関連病院で3年。行動科学という科目があった。人口6,500名の町。奈義ファミリークリニックへ。電子カルテで家族図が描ける。9名の家庭医。よく診る疾患の紹介。写真を使って後期研修医の活動の紹介。病院、自衛隊へ出張、往診。手技編。地域活動編。
家庭医を特徴つける3本柱
1)患者中心の医療
2)家族志向のケア
3)地域包括医療;予防医学、学校医、産業医、老人ホーム嘱託医。
行動変容の話。椅子の高さや視線、仕草で相手に波長を合わせる。驚いてほめる。プランは患者自身に立てさせる。重要度と自信度を訊く。怒りを表す患者に対して理解を示すことが重要。
家族志向のケア:家族の木をイメージ(家族図を描く)。家族ライフサイクル。それぞれの時期で発達課題がある。5段階ある。
生物・心理・社会モデル(G.Engel)の紹介。ターミナルケアの事例を紹介。
幕の内弁当仮説。家庭医療はバランスのよくとれた「おいしい」幕の内弁当に似ている・小さいがおいしいおかずは小児科・整形外科・皮膚科。患者中心の医療は医師患関係という白米に味をつけた混ぜご飯、癖になる味。家族と地域に目を向けた診療は弁当に「温かみとよい香り」を与える。
広場5はパネルディスカッション「テーマ;北海道での家庭医療の展開(どうすれば家庭医になれるの?)」 各プログラムの責任者への学生の質問。「多職種との連携」をどうしたらよいか?
急性期と慢性期で職種が異なるが連携は大切。連携パスを作成している。ボランティア実習に参加することを推薦。幅広く現場を見ること。多職種カンファランスに参加する。
「学生時代に打ち込んでいて、今役に立っていることは?」診療所の実習・見学。COML
との出会い。患者の生の声を聞いたこと。ケースから学ぶこと。日本PC連合学会に入ること。
学生が参加しやすい企画を増やしてほしい。
広場6は総括。 No1ポスター発表、家庭医問題の優秀解答者の発表(金メダル受賞は札幌医大3年内山博貴さん)最後は参加者全員で記念写真撮影。
場所を中華料理店に場所を移して懇親会。学生参加者全員から感想をもらった。大変好評で、来年度も充実した企画をしたい。(山本和利)